「退院するまでずっと車椅子でした」

―現在の症状やリハビリテーションなどによる改善の状況を教えて下さい。

2018年1月に脳出血で入院しました。以来、左半身の麻痺がひどく、左手は機能全廃、左足に著しい機能障害を抱えることになり、退院するまではずっと車椅子でした。その後、リハビリテーションを続けて3年以上が経過した現在は、左足は杖を使って歩けるまでに回復しています。左手の握り込みも、以前ほど強くはありません。現在は、訪問介護で週に2回、60分ずつの作業療法を続けています。ほかにもほぼ毎日、週5回は、指をパーやグーに動かすイメージトレーニングを自主的に行っています。最近は、とっさに手をつこうとか、指を使おうといった意識が不意に出てくるようになっています。

―MELTINの「手指用ロボットニューロリハビリテーション装置」を試した感想を教えて下さい。

使用後に、腕や指の筋緊張が抜けるような感覚がありますね。この前のバージョンの試作を使わせてもらったこともありますが、その時、使用後数日間は手指のむくみが軽減されて、冷え性もかなりよくなったように感じました。この装置を使って定期的にリハビリできるようになれば、麻痺が改善するのでは、と期待しています。装着して、指が動く際にも痛みはありませんでした。どのくらい力を出せたかなどが分かる評価機能など、目に見えるフィードバックがあるのもモチベーションアップにつながりますね。

「1日1歩の前進が1年後の改善につながる」

―リハビリテーションの難しさは?

やはり続けることですね。どんなにやる気満々の人でも、モチベーションを保ち続けるのは難しい。私自身、入院当初は諦めの気持ちが強く、思いつめていた時期もありました。しかし、少しでも改善する可能性が高まるならと思って、がんばってきました。1日に1歩でも0.1歩でも前進すれば、それが1年後の大きな改善につながる。気持ちが滅入っていては、治るものも治らないという気持ちでやっています。私の場合には、1日少しの時間でもいいので、毎日やったほうが、調子がいいことを実感しています。例えば、週末に集中して100回やるのではなく、1日10回でもいいから、毎日やったほうがいい。続けることにウェートを置いています。こういう装置があれば、安定してリハビリテーションが続けられると思います。

―「手指用ロボットニューロリハビリテーション装置」への要望はありますか。

自分が入院していた時に使いたかったですね。入院中は暇な時間が多くて、もったいないような気がしていましたし、入院中のリハビリテーションは、1週間に20分を1単位として9単位まで。発症後180日間制限もあるし、その後は、介護保険で1週間に6単位までと決まっています。保険適用外のリハビリテーションは治療費がかさむため、とても現実的とは言えません。回数が少ないと、どうしたって現状維持が精一杯。人によって症状はさまざまですが、一つ言えるのは、寝ていれば治るというものではないということです。近年、若年層の脳卒中患者が増加傾向にあると聞きますが、社会復帰を目指す人にとっては、こういう装置が有効な選択肢になると思います。